シルバーにスポットライト

ドイツのデッサウにあるバウハウスは1919年から1933年まで運営され、その間「バウハウスラー」と呼ばれる学生たちは年に数回、お祭りやパーティーを開催していました。 「凧」「ランタン」「ヒゲ、鼻、ハート」など、それぞれのパーティーにはテーマがあり、招待状や飾り付け、衣装など、綿密な計画が行われていました。中でも最も有名なのが、1929年2月9日に開催された「金属祭」(Metallische Fest)です。金属祭では、バウハウスラーたちが錫箔やフライパン、スプーンなど、色がシルバーのものなら何でも使ってコスチュームを作り、栓抜きや泡立て器、鈴などに扮して参加しました。 ゲストが滑り降りて部屋に入ることができる滑り台があり、部屋の中は銀色のボールで満たされ、建物の窓は錫箔で覆われ、1929年のイベントはさながらSF映画のワンシーンのようでした。(1938年から1946年にかけての「SF黄金時代」は、SFの「シルバー」時代と呼ぶべきかもしれません。シルバーという色は、その後何年もこのジャンルを支配し、シルバーは「未来派」「宇宙時代」の略語になったからです。(初の宇宙飛行士クルー、マーキュリー・セブンのシルバー・メタリックの宇宙服を思い浮かべてみてください。)

Bauhaus Dessau, Germany  バウハウス・デッサウ(ドイツ)

シルバーとフィクションの関係は、銀の弾丸が狼男を止める唯一の方法であるとか、銀は毒を感知するのに使えるとか、銀には神秘的な力があると考えられていた民間伝承にも見出すことができます。 しかし、現実の世界に目を向けると、銀には不思議な性質があり、特に薬効があることが分かっており、現代医学の父であるヒポクラテスを始め、ローマ人および世界の他の地域でも薬として使われていました。 銀には抗菌作用があり、その化合物は殺菌剤として創傷被覆材や医療器具に使われるほか、私たちが食事をする「銀食器」のほとんどにコーティングとして使われています。純銀の金属は、食品着色料(E174)にも使われ、甘いデザートの装飾に使われています。

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色としてのシルバーはグレーに似ていますが、特殊な顔料の組み合わせにより、本物の銀のようなメタリックな輝きを放ちます。色としてのシルバーは、紀元前4000年頃に元素として確認されて以来、1400年代になって初めて使われるようになりました。

 

銀の化学記号はAgで「アルゲンタム」(ラテン語で銀の意味)、原子番号は47です。銀は、純粋な形で地殻中または他の鉱物中に存在するほか、銅、金、鉛、亜鉛の精錬時の副産物としても発見されています。 アルゼンチンは、その名を冠したほど銀の宝庫であり、アメリカのネバダ州は、アラスカに次いで全米第2位の銀の産出国であることから、「シルバーステート」というニックネームで呼ばれています。現在、メキシコとペルーは世界で最も銀の埋蔵量が多い国です。

 

シルバーが宇宙時代の象徴的な色になったのは、その科学的根拠に基づく特性もあるのでしょう。銀は貴金属であり、反射率が高く、金よりも伝導性が高いため、硬貨、宝飾品、電気部品、写真やX線、浄水器、医療など、多くの貴重な用途に使われている、まさにSF的な色なのです。